キャロさんは焦っているようです


 突然ですが、私キャロ・ル・ルシエは焦っています何に焦っているかと言われれば聡明な皆さんにはもうお分かりかと思いますがエリオ君との関係についてです。
スカリエティ事件終了後に私はエリオ君とアルザスで二人きりの生活を始め、今度こそエリオ君をゲット出来ると思ったのですがエリオ君は相変わらず鈍いまま。
しかもフェイトさんやルーちゃんもまだエリオ君のことを諦めてないみたいだし…
本当に私はどうすればいいの!!
 というわけで私はエリオ君との仲をより確実にするために強硬作戦に出ることにしました。これはそんな私の戦いの記録です。

カポーン
「ふう、明日は模擬戦か。今の内に疲れを取っておかないと」
 エリオがそんな歳より染みたことを言いながら温泉に浸かる。
しかし極端な男女比も手伝って現在この広い温泉に入っているのはエリオただ一人である。エリオは一人で温泉を満喫し、今日の疲れを癒していた。

「しかしルーはこんな温泉を作るなんて凄いなあ…」
エリオはため息を漏らしながら周囲を見渡す。視界に入る限り石造りの温泉であった。
自然に囲まれた周囲の風景も相まってエリオ達の世界にはない幻想的な光景が広がっていた。
エリオは無作法だと思いながらもパシャっと温泉のお湯を顔にかける。文字通り温泉を全身で楽しみ、染み渡る感覚に身を委ねた。

「ん?誰かいる?」
エリオが神経を集中させる。自然の中に作られた温泉なので動物の類がいてもおかしくはないがエリオは念のため注意を払う。
近くの茂みからガサガサという物音がし、人一人くらいの大きさの物影がうごめいているのだ。
「誰かいるの!?」
エリオは「それが」人であった時のため、念のために声をかける。しかしその正体は拍子抜けするものであった。

「エヘヘ、ばれちゃった…」
「キャ、キャロ…!?」
 人影の正体はキャロであった。エリオが狼狽している理由はそれだけではない、その格好にもあった。
今のキャロは服を纏わず、素肌にタオルを巻いただけのものであった。普段から袖の長い服を着ているためかあまり日に焼けず、
陶器のように白く透き通る肌が月夜に照らされ、更に強調されていた。

「ばれちゃったって、キャロ何しにきたのさ!?」
エリオの脳裏には4年前の出来事が蘇っていた。なのは達の出身世界、海鳴に出張へ入った際、
キャロがエリオのいる銭湯へ乱入し、女湯へ強制連行した事件である。しかしあの時は二人とも10歳の子どもであった。
今はもう14歳である。大人ではないが少なくとも子どもではないのだ。

「何って、ここに来てからエリオ君とゆっくりお話する機会がなかったから、私エリオ君と話しておきたいことがあったんだ」
そういいながら一歩ずつエリオに近づくキャロ。足の先端が温泉に入りチャプという水音がした。

「話ならここじゃなくても出来るでしょ」
エリオは理性を視線を逸らし、理性を総動員しながらキャロを説得にかかる。同年代の女性と温泉に入り平然としていられるほど達観していなかった。
「ううん、ここじゃなきゃ出来ないお話なんだよ」
そう言ってキャロがエリオに近づく。肩まで温泉に浸かった身体を精一杯動かしてエリオのもとへにじり寄る。
しかしそこで思わぬ罠がキャロに襲い掛かる。慣れない温泉での移動で石床に足を取られキャロは思いっきり転倒してしまった。

「きゃああ!!」
「キャロ、大丈夫!?」
エリオは慌てて前進し、キャロを抱きとめた。
「ごめん、エリオ君・・・」
「僕は大丈夫だよ。キャロこそ怪我とかしてない?」

キャロは予想外のハプニングに喜びながらも内心でため息を吐いた。この場面で相手の怪我を心配するのがエリオの長所であり短所でもある。
温泉で、異性と二人きり事故とはいえ抱き合っている。どうしてこの場面で何も起きないのか。キャロはそれが疑問でならなかった。
「ところでキャロ」
「なに、エリオ君」
エリオが何故か視線を逸らしたまま声をかけてくる。よく見ると顔が心なしか赤かった。

「さっきからその、タオルが…」
「へ、タオル?」
キャロはエリオの言葉に促されて視線を下げる。そこには転んだ拍子にタオルが滑り落ち、一糸纏わぬ自分の肢体があった。
そこで冷静になった今の自分の体勢を思い出すキャロ。今の自分は事故とはいえエリオに思い切り抱きついている。裸体を全身でエリオに押し付けているのだ。
「きゃああああ……!!」
温泉にキャロの悲鳴が木霊した。


 「えっと、もう大丈夫、キャロ?」
エリオは後ろを向いたままキャロに尋ねる。キャロはエリオに背を向けてタオルを巻きなおしていた。
「もう大丈夫だよ、エリオ君」
その言葉にエリオは振り向く。確かにタオルを巻いたキャロが身体を赤く染めながら立っていた。
「ところでキャロはどうしてこんなことをしたの?」

キャロが落ち着きを取り戻し、エリオはようやく本題を切り出せた。するとキャロは申し訳なさそうに事情を話し出した。
「エリオ君がいつまで経っても私に振り向いてくれないから不安になって…
ここに来てルーちゃんやコロナちゃん達と会ったらその不安が余計大きくなって…」
キャロの気落ちしながらの告白を聞いてエリオは微笑を浮かべた。

「僕もキャロのこと好きだよ。だからそんな顔しないで」
「エリオ君……」
二人が顔を寄せてキスをしようとするがそれは叶わなかった。
バシャーーン!!と水しぶきを立てて倒れるキャロ。キャロはのぼせて気を失ってしまった。
「キャロ、しっかりしてよキャロ!!」
エリオの必死の呼びかけもキャロには届かなかった。

おまけ
「エリオ、どうしてキャロと一緒に出てきたの?二人はそういう仲なの?」
温泉から戻ってきたエリオとキャロを出迎えたスバルが身を乗り出して好奇心丸出しの質問をする。
その無責任な一言がフェイトを混乱させたるのだった。

「あわわわ、私の知らない間にエリオとキャロが大人の関係に…」
「落ち着くのフェイトちゃん」
エリオはあられもないない姿のキャロを抱えて温泉から戻ったため、皆の追及を受けることになるが、
夢の中のキャロはそんなことも知らずに幸せそうに眠っていた。キャロも合わせて追求を受けるのはまた別の話である



あとがき

Vividの温泉回を見て妄想がふとばしったのでエリキャロの恋模様を書いてみました。
エリキャロはいいですね。いつ見ても癒されるしニヤニヤ出来るし。
ここまで来たらもう付き合う寸前というかもう付き合っちゃえよって感じですね(笑)
エリオも勇気を出したことですしそろそろくっつけたいですが、くっきつそうでくっつかない二人の様子も見ていたいというジレンマです。
正直どう転ぶかは私にも分かりませんが。末永く見守るという方向で一つ。


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