変態カップル

「ふんふんふ〜ん」
暖かな陽射しと柔らかな風の中、キャロが部隊の荷物を整理している。彼女が所属する自然保護隊は任務の性質上、衣服の類が多くなるため部隊で管理することになる。
「あれっ?」
キャロが衣服の山と格闘していると、一つだけ他と違う手触りのものを掴んで引き抜く。長方形の形状に膝より上の丈、そして防護機能があるとは思えない薄い生地。
 

キャロが手にしたのは男性用の下着、それもサイズからして持ち主は自分と同年代であろう。この条件に該当する者はこの部隊に一人しかいない。
そうやってパズルを組み立てるように符号を一つ一つ合わせていき、一つの結論に辿り着いたキャロは顔を真っ赤に染める。
「あわわわわわ……!!」
 

慌てて手を上下に振ってみるがなんの解決にもなりはしない。
「とりあえず落ち着かなきゃ」
キャロは深呼吸をして体内の空気を入れ替えて上昇した体温と心拍数を鎮めると、冷静になった頭でこれからすべきことを考えていく。

「エリオくんに返さなきゃいけないけど今は任務中で会えないし…エリオくんが帰ってきたら渡してあげよ!!」
そういって結論を出すと、キャロはそのまま自室へと戻っていった。

「うーん」その晩、キャロは自室で一人呻っていた。その手には先ほどの下着が一枚。昼間に持ち帰ったものの、結局エリオに返す機会がなく今に至っている。
キャロは自室のベッドに横たわりエリオの下着を観察していた。特別な意図はなく、ただ好奇心からくるものだった。両手で持ち縦横に引っ張ったり、
逆さにしてみたり…
 

「こっちはどうなってるんだろう…あっ…」
その時手元が狂ってエリオの下着を落としてしまう。キャロの支配から離れたそれは重力に従って自由落下する。そしてゆっくりとキャロの顔に舞い降りた。
その瞬間キャロは全身を暖かく包まれたような気がした。今持ってる下着は普段エリオの身体を包んでいるものである。これを使えば間接的にエリオを感じることが出来る。
キャロの中で天使と悪魔が大喧嘩を始めたが最後は悪魔が勝利をし、下着を顔に押し付けた。

「エリオくん、エリオくん」
キャロはここにいない少年の名を呼びながら行為に没頭する。先ほどよりも強い雄の匂いが鼻腔を突きぬけ、脳天を揺さぶる。その刺激かキャロにとって余りに甘美で
注意力と判断力を奪うのに充分だった。

「キャロー、いるー?ミラさんが呼んでる、よ…?」
「エリオくん!?」
キャロは驚き声の方向に身体を向ける。その瞬間、キャロの中で何かが割れる音と共に時が止まった。部屋に入ってきたのは件の少年エリオである。
そしてキャロはエリオの下着を顔に押し付けて匂いを嗅ぐという変態的行為に耽っていた。

「エ、エリオくん!どうして急に!!」
「えっと何度かノックしたんだけど…」
キャロは途端に冷静になり下着を後ろ手にしまうが、行為の瞬間を見られた以上最早弁解は不可能である。そのせいか答えるエリオの声もどこか上ずっている。
羞恥の差はあれど互いに見たくない・見られたくない場面を見られたのだから当然である。

「えっと、これはその」
キャロが目を泳がせながら弁明を試みるが緊張からか上手く言葉にならない。未だにキャロの手にエリオのトランクスが握られていることがそれを何より物語っていた。
「最初はすぐに止めようと思ったんだけどこうしてるとエリオくんにギュッてされてる感じがして嬉しくなっちゃって」
「えっ……」
キャロの告白スレスレの言葉にエリオは顔を自身の髪と同じくらい赤く染めた。

「キャロ」
エリオが目の前の少女の名を呼び近づく。
キャロは自分の行為を非難されると思い身体を強張らせるが、予想に反して暖かい感触に包まれた。
「エ、エリオくん!?」
全身を包み込まれて体温が上昇して心臓も早まる。果ては喉がからからになり、言葉も上手く出てこなかった。

「僕がこうしてればそれはいらないよね、それともキャロは嫌?」
「…嫌じゃないです…」
キャロは自ら腕を回して問いかけを否定する。
エリオも抱きすくめる力を強くして互いの吐息を感じられる程接近する。
そのまま二人は倒れこみ夜明けまで過ごすことになったのは別の話。

おまけ
翌朝二人で任務に向い、ミラに「今日からはあんたらを同じ部屋にしてあげましょうか?」
と言われて揃って顔を赤くしたのも別の話ということで…



あとがき
エリオが紳士なんだか変態紳士なんだか分からない状態になってしまいました。
ピュア故に暴走しちゃうキャロはやっぱいいですね。
二人が朝まで何してたかって?それはご想像におまかせします。
 

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