機動六課の豆まき大会、(命の)ポロリもあるよ。

 鬼の仮装をしたエリオを遠巻きに構えてフェイト・シグナム・キャロ・ルーテシア・スバル・ティアナの6名が枡に入った豆を構える。。
参加者の目がかなり血走っていることが本気度を窺わせる。エリオは半ば諦めて被害を最小にする術を模索していた。。
(ご苦労様、エリオ…)。
念話で労うなのはの声だけが救いだった。。

なんでこんなことになったのか?それは遡ること数日前。地球の風習にちなんで豆まきをやろうとなった。そこまではいいが、盛り上げるために鬼役に一番多く豆を当てた人が一日鬼役を占有出来るオプションとエリオが鬼役に決まったことで事態は急変する。
フェイトが某電撃を放つ鬼のコスプレをさせると、それが似合い過ぎたために二人の召喚士が暴走したり竜と虫が勝手に出てきたりと本当に大変だった。
なのはがSLBで皆の頭を冷やしてなんとか事態を収めた。。

「それじゃあ、第一回チキチキエリオ争奪節分豆まき大会スタート!!」
なのはの号令を合図に参加者がわっと駆け出す。エリオは結局頭に角の被り物をしただけのオーソドックスな格好になっていた。

「エリオ、そこを動くなよ!!」
「エリオ君待ってて、今行くからね!!」「……エリオ、逃げたら承知しない」「なんだか楽しそうだね、ティア」「何やってんだろ、あたし…」「エリオ!!エリオ!!」

皆が思い思いの掛け声を上げてエリオに向かっていく。それを見て明らかに恐怖するエリオ。
というか半数以上が命の危険を覚える辺り相当歪んでいる。

「ハアハア…エリオ…今フェイトさんが行くからね」
かなりあれな表情であれなことを呟きながらフェイトが突進する。夢想するはエリオと自分の輝かしい未来。
純白のウエディングドレスに身を包んだエリオを自分がお姫様抱っこするのだ。
「えへへ…あの時とは逆だね、エリオ…」

この様子を見た某J氏は後にこう語る。
「無限の欲望を使ったってあんなことにはならない、彼女は一体何をしたんだ?」
正に愛の力は科学を超越すると言わんばかりの大暴走である。
使い方は大いに間違っているが…

「おい、テスタロッサ」
いつの間にやらフェイトと併走していたシにやりと笑いながらシグナムが口を開いた。
「なんですか、シグナム?」
答えるフェイトは不機嫌そうだ。今のフェイトにとっては何者も自分とエリオの花道を邪魔するものでしかないのだ。
「エリオに豆をぶつけるということはエリオを傷つけるということだがそれでいいのか?」
「えっ…?」
予想外の発言に固まるフェイト。自分がエリオを求めるのはエリオを愛するから。ではその愛するものを手に入れるために傷つけるのはいいのか?

「私にはエリオを傷つけるなんて出来ない、傷つけられたエリオを優しく包み込めばエリオは私にイチコロ……駄目よ、それを私自身がやるなんて最低だよ」
フェイトの頭がかつてないほどに高速回転する。かつての執務官試験でもここまではいかなかったであろう、処理能力で答えを出そうとする。
しかしフェイトの脳はそのままオーバーヒートを起こし、そのまま終了までフェイトが帰ってくることはなかった。

「悪く思うなよテスタロッサ」
シグナムは目線でフェイトを見やり動きを加速させる。
「エリオへの愛情は友情さえも凌駕するのだ!!」
凛々しい顔で最悪なことを口走りエリオを探す。前方100mの地点にエリオはいた。
しかし気づいたエリオは豆を当てられてなるものかと必死で逃げ出す。
するとシグナムは走りながら右手を乱暴に枡に突っ込む。掴み損ねた豆が零れるのも気にせずに投擲動作に入る。

「いくらなんでも当たるわけないじゃないですか…」
エリオが油断し動きを緩めると、背後から何かが高速で駆け抜けていった。
「えっ…?」
エリオが前方を向くと、敷地内の壁に何かがめり込みヒビを入れていた。それはシグナムが投げて豆だと気づくのに時間はかからなかった。

「うわあああ!!危険すぎですよ、シグナムさーん!!」
再び脚に力を込める。全力で駆けるが、シグナムもそれに負けじと豆を放つ。
弾丸のように飛び交う豆が亀裂を作る。
青ざめたエリオは更に加速するが、脚がもつれて転んでしまう。

「痛っ…!!」
スライディングの要領で倒れこんだエリオは次の展開を想像し、身を強張らせる。
しかしエリオの予想した痛みはいつまで経っても訪れない。
不審がって顔を上げるとシグナムがかぶりを振って立ち尽くしていた。
「どうやら玉切れのようだ」

見るとシグナムの枡には豆が一粒も残っていない。後先考えずに投げまくったため豆がそこを尽いていた。
「よかった…」
九死に一生を得たエリオはほっと胸を撫で下ろした。

一方スバルは…
「ティア〜これ美味しいよ〜」
試しに一粒食べてみた煎り豆の虜になってしまい勝負どころではなくなっていた。
「あんた今回の趣旨分かってんの?」
乗り気でないのに相棒をたしなめるのは生真面目故か。

「ほらほら〜食べないならティアのも頂戴」
「ちょ、あんた本当に今日の目的忘れてるわよ!!」
完璧に争奪戦から離脱していた。というか参加する必要あったのか?

(スバルとティアナはリタイア、フェイトちゃんは戦意喪失、シグナムさんは玉切れ…は言わなくても分かるか)
なのはが現在の状況を念話で伝える。
(ありがとうございます、なのはさん)

「残るはキャロとルーだけか。以外、というかどうやって戦うつもりなんだろう」
今回の豆まき勝負は身体能力が物を言うため、失礼だがあの二人は不利なはずなのだ。
ドーン……!!ドーン……!!
エリオがそんなことを考えていると、遠くから地響きが聞こえてきた。

「なんだろう?」
気になって背後を見た瞬間、エリオは驚愕する。そこには地雷王の肩に乗っかったキャロとルーテシアがいた。
「えっ!?えっ!?え〜〜!?」
地雷王が一歩歩くごとに木々はざわめき、鳥は我先にと逃げ出した。

エリオは背中を見せて逃げ出すが、足元から鎖が伸びてきて、そのままエリオの身体を絡め取った。
よく見るとそれはアルケミックチェーンで、キャロが魔法を展開していた。
キャロの魔法で身体の自由を奪われ、ルーテシアの召喚虫で攻撃。見事な連携攻撃だ。

地雷王は少しずつ近づいてくる。地雷王の手には豆がこんもりと盛られていた。
地雷王のサイズと豆の量からして勝利は確実だった。
だが、こんなものが当たったら今度こそ死んでしまう。なんとか生き残りを図るべく、エリオは思いつきの発言をしてみる。

「この状態で勝ったらどっちが勝者になるの?」
はっとなって目を合わせる両者。これで助かったと胸を撫で下ろすのも束の間、二人が揃って口を開いた。
「「私達二人で仲良くエリオ(君)をいただくから大丈夫だよ」
それは素晴らしい笑顔で言ってのけた。
地雷王が手を振り上げる、そこでエリオの記憶が途絶えていた。

「あれ、ここは?」
エリオが目を覚ますと六課の寮だった。
「エリオ君、目が覚めた?」
様子を伺うようにエプロン姿のアイナがひょっこり顔を出した。
「アイナさん!?」
訳もわからず困惑していると、アイナが近づいてくる。

「なのはさんから大体の事情は聞いたけど、どうやったら豆まきで気絶するのよ…」
「えっと…」
エリオが説明に窮していると、アイナが着替えを持ってやって来た。
「別に説明はいいからシャワーでも浴びてきなさい。凄い汗よ?」

指摘されて始めて自分の服が汗で湿っていることに気づく。汗吸収した衣服が肌にくっ付いて不快なものになっていた。
「それじゃあお言葉に甘えてシャワー浴びてきます」
「畏まらなくていいわよ。隊員の体調管理も寮母の仕事なんだから」
そう言うとエリオはシャワー室に向かっていった。

「ふふ、皆せっかちなんだから。果報は寝て待てってね。どうやって頂こうかしら」
二人きりの寮内に人が来るまで最低3時間、遠くない未来の情欲に身を悶えさせるアイナの姿がどこまでも魅惑的だった。


あとがき
てなわけで今回は機動六課のメンバーが少し勘違いした豆まきに挑戦しました。
この作品自体は一年前に書いたものでそのまま寝かせていたものなので今見直してみると中々見れたものじゃない出来ですがご容赦ください。

4期の単行本に映画にゲームとまだまだ冷めることを知らないなのは熱に乗っかりつつまだまだなのはで盛り上がって行きたいと思います。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いします。

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