聖王陛下のバレンタイン

「なのはママ、私もバレンタインチョコを作ってみたい」
ヴィヴィオがそんなことを言い出したのはなのはがチョコ菓子の材料と格闘している最中だった。
「いいけど、ヴィヴィオは誰にあげるの?やっぱりユーノ君?」
 

なのはが目線を合わせて問いかける。
「うん!ユーノさんでしょ、エリオでしょ、それにクロノさんにグリフィスさん…」
ヴィヴィオが指折り数えながら名前を挙げていく。
それを聞いてなのはが少し引きつった顔をする。

「ヴィヴィオ、バレンタインがどういう日か知ってる?」
恐る恐る聞くなのはにヴィヴィオは首を傾げながら答える。
「お世話になった人にチョコレートをあげる日だって聞いたけど違うの?」

真っ直ぐな瞳を向けて言い切る。おそらく本当に知らないのだろう。
なのはは一瞬と惑うがそのまま優しく微笑んだ。
「じゃあなのはママと一緒に飛び切り美味しいのを作ろうか」
「うん!!」
そういってヴィヴィオは一足先にキッチンへ向かっていった。

それまで傍観していたフェイトが心配そうになのはに問いかける
「ねえ、なのは、ヴィヴィオにバレンタインの本当の意味を教えなくて良いの?」
ヴィヴィオが多少誤った知識を持っていることに不安を示すが、なのはは大丈夫と返した。
「私達が心配しなくてもヴィヴィオもそういったことは自然と学んでいくだろうし、それに今はあの子の気持ちを大事にしてあげたいんだ…」
「なのは…」
なのはの答えを聞いたフェイトはホッと胸を撫で下ろす。その横でなのははピンク色のエプロンを身につけ、ヴィヴィオの側に向かっていった。

「やったー完成だー!!」
「よかったね、ヴィヴィオ」
二人の下に小分けにされたチョコレートが並べられている。後はラッピングをするだけである。
ヴィヴィオはそれを見て満足気に頷き、なのはは優しくヴィヴィオの頭を撫でていた。

「後はラッピングだけだけどヴィヴィオ一人で出来る?」
「うん、大丈夫だよなのはママ!!」
力強く頷くヴィヴィオを見てなのははキッチンを後にする。必要以上の干渉はしないのが高町流なのだ。

「よいしょっと…」
キッチンに一人になってからヴィヴィオはあらかじめ用意しておいた包装用の袋やリボンを取り出した。
赤や黄色など見ているだけで楽しそうな色や模様で如何にも子どもが好みそうなものだった。
だがその中に一つだけ、他とは異なる落ち着いた色合いの大人びた‐見方を変えればちょっと背伸びをした‐モノがあった。

ヴィヴィオはその袋を前にうんうんと首を捻る。
「やっぱりちょっとおとなしすぎるかな?でも子どもっぽく思われたくないし…」
そうやって悩むヴィヴィオの姿は完璧に本命チョコのあげかたに迷う女の子そのものだった。

「よし、決めた!!」
覚悟を決めたのかヴィヴィオは先ほどの大人びた袋にチョコレートを入れてリボンで口をした。
そして両手を握り締め自らを励ました。

「私だって女の子なんだからね、なのはママ」
そう言うとヴィヴィオは作ったチョコレートを抱えてキッチンを後にする。
本命チョコの行き先はヴィヴィオだけが知っている…


あとがき
バレンタインだから何か書かなくては、と飛んできた電波を形にしたらこんなことになりました。
ヴィヴィオがちょっと腹黒い感じになってしまいましたがきっと仕様です(えっ
 

〈二次創作〉

inserted by FC2 system