恋の行方とこれからと
 

 「じゃあまた明日ね〜」
放課後を向かえクラスメイト達が教室を出て行く。部活へ向かうもの、遊びに行くもの。
それは彼らリトルバスターズも例外ではなかった。

「おおーい!!理樹、早く練習に行こうぜ!!」
「ごめん真人、日誌を書かなきゃいけないから先に行っていてよ」
「おーけー、先に一足先に筋肉さんと練習しているぜ」
真人は腕の筋肉を盛り上げて見せ、教室を後にする。

どんな練習をする気だ…と内心で突っ込みながら理樹は日誌を埋めていく。彼らが起こす騒動を除けば何もない、概ね平和な一日だった。
だがこの平和が今、静かに終わろうとしていた……

「あれ、何だろう?」
理樹が何気なく机の中に手を入れると固めの紙のようなものが指先に当たった。
「手紙…?」
机から取り出して見ると長方形の便箋に直枝理樹様へと宛名書きがされていた。
「まさかね……」
理樹は頭に浮かんだ可能性を振り払いながら便箋を開ける。
簡単な糊付けがされていただけらしく、そこまで力を入れずとも便箋の封を切れた。

中の手紙には丸みを帯びた丁寧な字でこう書かれていた。

  「大事なお話があるので明日の放課後、裏庭まで来てください。

                                   杉並睦美 」

 「これって…」
一字一字確かめるように読んでいく。紛うことなきラブレターであった。

「こら理樹、これで何度目だ!!」
グラウンドに鈴の大声が響き渡る。
それもそのはず、今日の理樹は打撃でも守備でも精彩を欠き、まるで別人のようになっていた。
痺れを切らせた鈴が渇を入れるも、理樹の気力とともに空に吸い込まれるだけであった。

結局この日の練習は早々に切り上げることになった。

その日の晩、理樹の部屋に幼馴染メンバーが集まるが、その空気はいつもより重苦しかった。
「どうしたんだ理樹、今日は何か変だぞ」
「お前らしくもない、悩みがあるなら言ってみろ」
「筋肉の悩みなら相談に乗るぜ」
「モンペチ食うか?」

それぞれの言葉で励ましていく幼馴染達。後半二人は若干違う気がするが、そのいつも通りの対応に理樹は少し気が楽になる。

「実は机の中にこれが入ってて…」
理樹は躊躇いながらも恭介たちに手紙を見せる。

「どれどれ…」
恭介たちは車座になりながら手紙を見る。
最初は面白半分でいたが内容を理解するにつれ、目を丸くしていく。
「おい、理樹…これって…」
恭介が冷や汗をかきながら理樹に尋ねる。
「うん、ラブレターみたい。でもこんなこと始めてだからどうしていいのか分からなくて…」
理樹が不安そうに答える。
「うおおおお、ジェラシーーー!!」
真人が髪を掻き毟りながら叫びだす。
「うっさいぼけーーー!!」
そこ鈴のハイキックが炸裂する。
真人は曲がってはいけない方向に首を曲げて沈み込んだ。
「どうした、鈴?いつもより蹴りの威力が高いぜ、やきもちでも焼いたかい?」
「知るかボケ、理樹が誰と付き合おうとあたしには関係ない!」

そのまま不機嫌なオーラを隠そうともせずに鈴は部屋をあとにする。
やれやれと呆れる恭介。わけもわからず戸惑う理樹。目を回している真人。
三者三様の表情を見せる中、蹴られ損の真人は仰向けのまま天を仰いでいた。

冷たい風が吹きぬける中、理樹は指定された裏庭に足を運ぶ。
多くの生徒にその存在を忘れられた寂しい場所である。ペンキの剥げたベンチやあまり手入れされていない草木がそれを物語っていた。
裏庭の中ほどで杉並はまだかまだかと理樹を待っていた。
「直枝君、ちゃんと来てくれたんだね」
理樹の姿を確認すると杉並は顔を上げる。
「うん、ちょっと待たせちゃったかな?」
「そんなことないよ、私も今来たとこだから」
定型通りの会話をする二人。これから話す内容が内容だけにお互いに緊張を解そうとする。

しかし、その後が続かず沈黙が舞い降りる。初秋の風が冷たく泣いていた。
「あのっ……」
覚悟を決めた杉並が一言目を発する。小刻みに震える左手が緊張のほどを表していた。
「直枝君…あなたのことが好きです…私と付き合ってください!!」
ゆっくりと、しかし確実に伝えていく。杉並が抱いてきた確かな想いを…
「………っ!!」
杉並は目を閉じ無言で理樹からの返事を待つ。一生とも感じられる時間の後、理樹も口を開く。
「ありがとう、杉並さん」
堅い表情のまま続ける
「気持ちは嬉しいけど杉並さんの気持ちには答えられないよ…」

理樹の言葉を理解した杉並を包んだ感情は悲しみや悔しさよりも「やっぱり駄目だったか…」というものだった。
この結末はある程度予想できたから。杉並もいつも理樹の隣にいる少女のことは知っている。
それでも最後まで足掻きたかったのはこの恋を諦めたくなかったから。だからこそ告白をして自分の気持ちにけりを付けたかったのだ。
結局は玉砕に終わってしまったが…

「ありがとう直枝君」
そういうと杉並は精一杯の笑顔を向けてその場を後にした。

「ただいま〜」
杉並は努めて明るく振舞い、寮に帰ってくる。
「おかえり〜」
ルームメイトの勝沢が迎える。

「………」
「………」
無言のまま時間が流れる。
ルームメイトで友人の勝沢は以前から杉並に恋愛相談を受けていたため、今日がその日であることはそれとなく知っている。
しかし本人が行ってこない以上、切り出すわけにもいかない。

「直枝君に振られちゃった……」
杉並がゆっくりと口を開く。その表情は放っておけばいまにも感情が爆発しそうな危うさを帯びていた。
勝沢はそれを優しく抱きとめる。
「でも気持ちはちゃんと伝えたんだよね。偉いよ、むつ…」

勝沢の言葉に杉並は泣きそうになるが堪える。
杉並の感情を察して勝沢は子どもをあやす様に背中を撫でた。
「頑張ったね…でもさ、泣きたいときは泣いてもいいんだよ」
それが引き金となり杉並は堰を切ったように泣き出した。
「うわあああ……!!」

季節が移ろい始める秋の夜、一つの恋が終わりを告げた……

あとがき

忘れてたわけじゃないよ!?
いきなり弁明から入ってごめんなさい。
大学が始まった途端に忙しさがマックスになってSSを書く時間が激減していました。
でもさぼっていたわけじゃないです。とある合同誌に原稿を寄せたりしていました。

さて今回のSSですが、こ れ は ひ ど い !!
リトバスはかなり久々なうえに恋愛、それも失恋ものだったためかなり苦労しました。
勉強しなおした方がいいレベルかもしれんねこれは。
個人的に最後のシーンは上手く書けた(それでも程度は知れてるが)と思うのですが、
前半の作りちょっと雑になってしまった感が…

反省すべき点を反省して次に生かしたいです。
ではまた〜
 

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